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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)1672号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人水野久の上告趣意第一、第三点について。

所論は事実誤認又は量刑不当の主張であっていずれも適法な上告理由とならない。

同第二点について。

記録を調べてみると、被告人は昭和二六年二月一二日の原審第一回公判期日には適法な召喚手続を受けながら同月九日附医師壬生倉博作成の病名胃潰瘍一月休養を要する旨の診断書を添附した期日延期願を提出したのみで同期日に出頭せず、更らに同年三月九日の同第二回公判期日にも適法な召喚手続を受けながら同月六日附同医師作成の前同様の診断書を添附した期日延期願を提出したのみで同期日に出頭しなかったため原審は被告人の陳述を聴かず即日結審の上判決の宣告をしたことがわかるのである。ところで、論旨は被告人が右各期日を懈怠したのは胃潰瘍のため出頭不能であったというが、これが疏明資料としてはただ前記医師壬生倉博作成の診断書があるだけで他にこれを証する資料はないのである。しかるに右の各診断書は刑訴規則一八三条所定の方式に適合せず、従って同一八四条によりこれを受理すべからざるものであるから原審は被告人の所論疾病の事実、少なくとも不出頭につき正当の事由あるものとは認めなかったものというべく、したがってこのことにつき原審に何等違法はないのである。されば原審が被告人は再度の公判期日に正当の事由なく出頭しなかったものとして旧刑訴四〇四条に従い判決したことは相当というべく、所論は結局原審の認めなかった被告人の右疾病の事実を前提とするものであって理由のないこと明らかである。なお本件について刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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